巷で「安全安心」と言われているオーガニック化粧品は、実際にはどういうものなのか、詳しく解説していきます。「オーガニック」とは何か、日本での定義から世界のオーガニックの定義まで詳しく見ていきましょう。
日本のオーガニックの定義
日本のオーガニックの定義においては、農林水産省が定めた「有機JAS」という基準があります。
この「有機JAS」という基準は、
- 種まき又は植え付けする2年以上前から畑の土に禁止された農薬や化学肥料を使用していないこと
- 栽培中も禁止された農薬や化学肥料を使用していないこと
- 遺伝子組換えの種を使わないこと
- 病害虫を防除するのに農薬に頼らないこと
など、細かいチェック項目がいくつも並んでいます。
これに従って「有機野菜」などと名称が使えるようになれば、農薬を使わず、遺伝子組み換えなどをされていないものが収穫できそうですが、残念ながらこれは農作物を対象にしたものです。
つまり、化粧品の基準ではないのです。
日本においては、他に主だったオーガニックの認定団体というものはありません。
そのため、日本でのオーガニック化粧品は一般的に、「有機栽培で作られた自然由来の成分を配合しているもの」をいうと考えられています。
フランスのオーガニックとは
フランスには、「エコサート」という国際有機認証機関があり、世界でもトップレベルの厳しさと知名度を誇ります。
対象物は農作物もですが、化粧品など幅広く取り扱っているのが特徴です。
エコサートの化粧品認定基準には、
- COSMEECO
- 全植物原料のうち50%以上がオーガニック&全成分の10%以上がオーガニック
- COSMEBIO
- 全植物原料のうち95%以上がオーガニック&全成分の10%以上がオーガニック
の2種類があります。
さらに、動物実験を行っていない、動物由来の原料は生きた動物からのみ採取する、パッケージはリサイクル可能など、人間への配慮だけではなく動物や環境への配慮もされている基準と言えます。
イギリスのオーガニックとは
イギリスと言えば、オーガニックの元祖、というイメージがありますね。
イギリスには、ソイル・アソシエーションという認証機関があり、1946年に英国土壌協会として設立された、世界で最も古い認証機関です。
ヨーロッパの一般的なオーガニック基準よりも厳しく、
- 土壌を用いない栽培の禁止
- 遺伝子組み換え作物の制限
- 工業地帯から離れた場所で栽培されている
- 人工ナノ物質の使用禁止
といった、どちらかというと化粧品というよりは、植物原料の認定をしている機関という形で認知されているようです。
オーガニック認証以外にも、オーガニック農法の指導や援助なども行っているため、いかに自然な方法で栽培するか、ということに重点を置いている姿勢がうかがえます。
ドイツのオーガニックとは
ドイツのオーガニック基準で有名なのは、BDIHというドイツ化粧品医薬品商工業企業連盟が制定した基準です。
国家基準ではありませんが、BDIHの認定を受けている化粧品は、安全性が高いと世界で評価されています。
具体的な基準としては、
- 原料が微生物分解可能である。
- 放射線などによる防腐加工はおこなわない。
- 合成香料、合成色素、シリコン、パラフィン、その他石油製品、エトキシ化物質は使用しない。
などがあり、極力自然のままの形を残そうとしている姿勢がうかがえますね。
アメリカのオーガニックとは
アメリカには、米国農務省が管理するUSDAというオーガニック認定基準があります。
具体的な基準としては、
- 全成分中95~100%が有機栽培によってつくられた原材料を使用
- 収穫より3年前から、農薬や化学肥料を使っていない土地で有機栽培をしている
- 遺伝子組み換え、放射線照射の使用禁止
などとなっており、世界で最も厳しい基準だと言われています。
しかし、これは食料品に関する基準であり、化粧品の基準ではありません。
実はアメリカでは、日本と同じく、化粧品についての明確な基準は確立していないのが現状です。
EU民間団体のオーガニックとは
2007年にヨーロッパの化粧品メーカーが中心となり、発足したオーガニック化粧品認証団体「NATRUE(ネイトゥルー)」は、ベルギーに本拠地を構えています。
このネイトゥルーは、基準を一般公開する、認証制度をビジネスにしない、などをポリシーに活動しており、「自然化粧品」「オーガニックな原料を含む自然化粧品」「オーガニック化粧品」の、3つの認証クオリティがあります。
ここでいう「オーガニック化粧品」の基準としては、配合されている自然原料のうち95%以上がオーガニック(有機栽培もしくは検査された野生採集)でなければならないとされています。
他にも、NATRUE認証を受けるには、
- 環境にやさしい製造方法。
- 合成香料および合成色素は配合されていない。
- 石油系原料(パラフィン、PEG、プロピル系、アルキル系、その他の石油誘導体等)は含まれていない。
- 遺伝子組み換え植物あるいは有機体からの原料は含まれていない。
などを満たさなければなりません。
これらは主に配合成分や製造方法などについて記載されていて、土壌などの制限をしている他の認証団体とは少し異なりますね。
化粧品メーカーが中心となっているだけあって、私たちが「オーガニック化粧品」というイメージに最も近いかもしれません。
オーガニック認定はあくまでも目安
オーガニック認定があくまでも目安と考えた方が良い理由は、「オーガニック認定はひとつの基準でしかない」ことと「認証にはお金がかかる」ことにあります。
どういうことか、具体的に見ていきましょう。
オーガニック認定はひとつの基準でしかない
オーガニック認定機関は、世界を見ても国が主導で進めているところは少ないです。
それぞれの国の団体によって、任意で検査をしています。
当然そこには人の判断が加えられるので、その過程を経て認証されたものは、絶対的なものではなく一つの基準でしかないことを覚えておくといいですね。
認証にはお金がかかる
意外なことかもしれませんが、オーガニックの認証はタダで行われるわけではなく、年会費や検査旅費、認定申請費などの名目で、少なからず費用が掛かるものです。
認証を受けるメーカーはもちろん、認証機関の基準を受けるために努力しますが、これらの費用を製品開発のために当てたいという企業もいます。
その場合は、よりよい製品になっていく可能性がありますので、必ずしも認証を受けていることがイコール良い製品、とはいえないのです。